私たちは心を「行動抑制ネットワーク」として再定義し、このネットワークがモノにも備わるかを議論する活動を通し、分け隔てのない社会作りに貢献します。
「心」を辞書でひくと「人間の精神作用を司る器官」とあります。一方、ペットを飼う人々の多くは彼らに心があると感じているでしょう。心は人間のみに備わるものではないのです。
では人間とペットに共通の「心」とは何でしょう。それは「わからなさ」であると私たちは考えています。
たとえば私が図書館で本を読むとします。この時お気に入りの音楽を思い出し踊ってしまうと、私は「わからなさ全開の人」として扱われます。踊る他にも、走る、寝るなど多くの余計な行動が出現を控えています。にもかかわらず私が本を読めるのは、余計な行動の発現機構が互いに行動の出現を抑制し合っているからです。
このように「余計な行動を抑え、わからなさを抱えておく仕組み」が「行動抑制ネットワーク」です。
重要なのは、抱え込まれたわからなさは、創発性や創造性のもとになるということです。
解決困難な問題や、意味不明なできごとに出会ったとき、ふと答えを創発したり、創造の意欲がわいたりするのは、抱え込まれたわからなさが自らを解き放つ瞬間なのです。
行動抑制ネットワークは外から見えず、その形は余計な行動の数が刻々と変わるにつれ雲のように移ろいます。このように私たちの内に潜み姿が不定な存在、それはまさしく心でしょう。そして心は、新しいできごとを創りだすもとになるのです。
私たちはこのネットワークがモノに備わる可能性を探ります。
モノの心の研究会・主宰
森山徹(信州大学)